どの道をいくべきか

伯父が死んだ。

 

お茶のついでに母から香典返しを受け取る。私は告別式には出てない。

会葬礼状には華々しい経歴が書かれていた。医学に邁進していたこと、晩年は孫に恵まれ、趣味に没頭していたこと。なんてすばらしい人生だろう。誰も文句がつけられない、これぞ、といった人生だ。

 

今の時代、これだけの人生を送れる人は一体どれほどいるのだろう。そう思う時点で私は小人物か。

自分の人生に価値を感じたり、素晴らしかったと思えることが、今の時代難しいんじゃないかと思うのは、私だけかな。些細な日常に意味を感じられるなら、そうでもないのかもしれないし、実際些細な日常に意味を感じることこそが現代の幸せだと、そんな風になってきている気はするけど。

自分の好きなものを集めて、自分だけの生活をつくる。たしかに、楽しいよね。私もわかるよ。でも、会葬礼状に目を細めたくなったのは、現代でも、ちょっと前の昭和世代でも、誰もが文句がつけられない立派な人生が綴られていたから。

 

父のことを思う。私は父が苦手だ。いや、苦手を通り越し、私の記憶の中だけの人間にしようとしている。だいぶん前からだ。

まるで陰と陽だ。父と伯父を思い、そう感じた。

 

父の認知症が進行しているみたいだ。

いよいよだ。生真面目で完璧主義な父。いつかはこうなるだろうと思ってた。

祖母も認知症、伯父はパーキンソン病を患っていたと聞いた。みんな、頭だな。

冷静にそう思った。

 

もう家族に煩わされたくない。そう思うどこかで、迷う自分がいる。

こんな自分も捨ててしまいたい。