どの道を行くべきか⑤
私は生まれてから6年大阪で、
その後東京、11の時から福岡に住んでいた。
その後は仕事で転々としている。
出身はどこ?こんなにめんどくさい質問はない。
福岡が一番長いから、福岡と答える。
じゃあどこどこって知ってる?
知らない。
福岡が長いとはいえ、幼少期から暮らしている人に比べると、郷土愛も知識も薄い。
知らないんだー。。。
ずっと福岡にいるわけじゃないからね^^;
一体何回このくだりを繰り返しただろう。
両親も福岡の人じゃないから、昔のことも、おいしいパン屋さんも、どこどこのだれだれさんも、知らない。私にとって遠い世界のことのように思える。
ずっとどこか一か所で暮らすって、どんな気分なんだろう。
生まれた時から住んでる家を眺めるときって、どんな思いがするんだろう。
親の小さい時からの知り合いがちょっと家を訪ねる。
幼馴染の結婚の噂話。
お正月の親族会議。
よくわからない近所のお兄さん。
そんな些細な日常のある風景は、死ぬまで私には訪れない。
そして私には、いつまでたっても朝ドラがしっくりこない。
もちろん、世の中には外国と日本を行ったり来たりしている子供だっているし、ありふれたことだっていうのはわかってるけど、思うに私は土着志向なのだ。
地に根を張って暮らし、些細な会話を交わし、ささやかな季節の移り変わりを楽しみたいという、ミニマム人間なのだ。
それが、最近わかってきた。
わが家系の中では、突然変異かもしれない。
父方のI家は、家族間の結束が薄い。むしろ仲が悪い。
私はそれは、父のせいのような気がするのだ。決めつけるつもりはない。何か私の考えが及ばないところで、何かあったのかもしれない。
けど、父は元バンドマンである一方で、父方の親族はほぼみんな先生と言われる人たちだ。代議士、お茶の先生、教師、大学教員、など等。父は教師が大嫌いだ。
どんなに頑張っても、そんなすごい人たちの中で箔のついた実績を上げることはそうそうできない、代わり映えしない、埋もれてしまう。そんな環境に、父は自分の価値を見出せなかったのかもしれない。自分をもっと見て欲しかったのかもしれない。
あえて軟派な生き方を選んだのは、そんな理由がある気がするのだ。悲しいかな、なんとなくわかってしまうのだ。
ただ周りの人たちを生きていくことを楽しむ、というには、I家は向いていなかったのだ。そんな家族の在り方が憎いやら、悲しいやら。
結局父は、結婚してから中小企業の社員になり、転勤族となる。がむしゃらに頑張って(私は振り回され)役員にまで上り詰めるが、社長になれず早期退職。独立する。
路傍の花のような、そんな生き方は、どうしたらできるんだろうか。